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2017/05/19

ブランディング・CI

「企業理念策定」のコツ

「企業理念と企業ロゴ策定」についてご依頼を受け、制作しました。

「販促コンテンツ企画制作」を主とする弊社の通常提供サービスではありませんが、ご縁があり実際にお手伝いしてみると、我々も非常に勉強になりました。

今回はその経験をもとに、

●経営理念とは?

●策定プロセス

について、学んだことをお話したいと思います。

企業理念とは?

多くの方が耳にされたことがあるかと思いますが、「企業理念」「ビジョン」「経営方針」「社是」などさまざまなものが存在し、それぞれにどう違うのか?というのは、これまた、さまざまな解釈があります。

そしてこれまたよく耳にする説明ですが、結論から言えば、「それぞれの言葉に明確な違いや定義があるわけではありません」。

ただし、共通するポイントとして、これらはすべて、

「企業の使命」「存在意義」などを示すものを表すものである

ということになります。

■企業理念(ビジョン)

一般的には最上位に『企業理念』があり、「価値観(使命:ミッション)」「企業存続の目的(存在意義:バリュー)」が表されます。

・「価値観(ミッション)」は、組織にとって不可欠で普遍な基本的主義・方針です。

・「企業存続の目的(バリュー)」は、(単なる金儲けを越えた)企業設立の目的です。

*企業によっては「企業姿勢」「信念」「ビジョン(なりたい姿)」までをここに含める場合があります。

■ロゴ(ブランド・ステートメント)

経営理念やビジョンを表すものとして、コーポレートロゴとブランド・ステイトメントがあります。
経営理念よりも露出が多く目に留まるものなので、経営理念策定と同じタイミングでリニューアルする場合が多いのです。
ステートメントとは、「声明」の意味で、ロゴと共に表記されるタグライン、キャッチコピーです。
その多くは「企業のブランドが掲げる理念や使命を簡潔な文として表したもの」となります。

■クレド

最近ではジョンソン・エンド・ジョンソンや、ザ・リッツ・カールトンなどから広まった『クレド(信条)』という表現を用いる企業も増えています。
これらは主に「ビジョン」と「ビジネスに向かう姿勢、商品・サービス」を結びつけることでブランド(サービス)力を強化し、社員に誇りをもたらす、という意味合いがあります。

■経営方針

経営陣にとって忘れてはならない基本的なマネジメント方針、指針です。

■行動指針・行動規範

全ての従業員にとっての行動基準・指針です。理念だけだとどうしても概念的なものになり、従業員の多くは「それで、どうしたらよいの?」という迷いが生じます。
ですのでもっと具体的に、これから我々はこうあるべきだ、こう行動しよう、といった意味合いの項目までセットで策定することが、企業理念を具現化するために非常に重要です。

CI

■経営ビジョン

もう少し短期的なものとして、「経営ビジョン」という定義があります。
こちらは「2020年まで」など、中期経営計画などで用いられます。

なぜ企業理念が必要なのか?

古くから、『企業理念は不要である』と主張する経営者の方も存在します。
『変化の激しい時代の中で、普遍的なものを策定すると、それによって思考や業務が縛られる』というのがその主張です。
それでも、ほぼすべての企業がこれらを策定しているのは何故か、という事を考えると、

・企業が成長するに従い、さまざまな価値観、経験を持つ社員が集まることになる
(あるいは事業統合や合併などで、異文化のメンバーが集まった)

・外部の環境変化が激化し、今後、ますます柔軟な発想とスピーディーな環境変化への対応が非常に重要

・その際に「根本的な共通した価値観」がないとまとまりに欠け、あらぬ方向に進みかねない

という事なのだろう、と思います。

なので、一見すると古くさい「理念」という概念が、時代が変わっても普遍的に必要とされている、
というよりも、ますます重要になってきているのではないでしょうか。

また、

・魅力的な理念(やビジョン)に惹かれて新たな(優秀な)人材が集まる

・ポリシーを示すことで、お客様との間に信頼関係を築きやすくなる

・成長性を表す理念は、投資面からも有効

といった効果もあります。


経営学者ジョン・コッターは著書『企業文化が高業績を生む』の中で、以下のように結論付けています。

「戦略に合致した企業文化こそが、高い企業業績をもたらす」

※米国企業207 社へのアンケートを通じ、「企業文化の強度」と過去10年間の純利益、ROI、株価との関連性を分析。結論を導いた。

また『ビジョナリー・カンパニー』の著者、ジム・コリンズは、

「時代を超えて発展する企業には、外部環境の変化に挑戦し続ける力強い文化がある」と説きました。

企業文化醸成の根本は、企業理念・ビジョン・行動指針に集約されると言えるでしょう。

策定プロセスとコツ

①協議メンバーを選定する

これから起業する、もしくはスタートアップ企業であればおのずと決まる協議メンバーですが、すでに設立から歴史のある企業の場合はこれがなかなか大変ですね。
それでも、全社員で、となると収拾がつかなくなりますので、人数は多くても10名程度、とされています。
「ビジョナリーカンパニー」とされる企業も、魅力あるビジョンで成功している企業も、多くは社長だけ、もしくは数名で決定しています。
社長を含めた経営メンバーに「部署のエース」など将来を期待する中堅、若手を加える、というイメージでしょうか。
経営層だけで10名を超える、となるような大企業では、「若手選抜」で案を出し、それを「経営層」で決定する、という各10名以下に抑えたチームによる二段構え、でも良いかもしれません。

②自社の「基本的価値観」を棚卸する

次に、そのメンバー各自で

・なぜ自社が存在しているのか(何が顧客から支持されていると考えるか)

・これからどうありたいのか(課題となる部分は何と思うか)

について、自身が特に重視する項目を挙げてもらいます。
その後で、共通する「基本的価値観」を絞り込んでいきます。
ここでのポイントはあくまでも「自社にとって」「大切な」、さらに社員に「共通する」価値観であるかどうか、です。
「世間的な体面」を意識し過ぎたり、どこかの企業のマネは避けるべきです。

「ビジョナリーカンパニー」では、

・状況が変わっても、その価値観を守りたいと思えるかどうか

が重要だとされています。

・業績が大きく落ち込んでも、その価値観を守りたいか?

・100年後もその価値観は自社にとって重要か?

などの基準で洗い出し、5つ程度に絞り込みましょう。

③わかりやすい文章にする

上記をベースに、文章に落とし込みます。(今回のケースではここからお手伝いしました)
理念やビジョンが社員に受け入れられるような工夫が必要です。
長々とした文章や、日常使わない難しい言い回しを使うと、社員は共感したり日常の業務の中でそれを活かして行動(や判断)ができません。
ただし、そうなるとどうしても平凡な、ありきたりな文言になり、物足りなさを感じるかもしれません。
であればなおさら、「使用する単語」「表現」「文章」については慎重に検討しましょう。

最後に

「企業理念」ではありませんが、「理念」の重要性を示すこんなエピソードがあります。
1970年、大阪で開催された国際万国博覧会(万博、EXPO’70)テーマ館のサブ・プロデューサーがSF作家の小松左京氏でした。(チーフ・プロデューサーは岡本太郎氏)

当時の日本を代表する学者、建築家、クエリエイターらの集結した巨大プロジェクトにおいて、小松氏は敢えて全員の作業を止めて、改めて「万博開催における基本理念の説明」を行ったそうです。
実は小松氏はEXPO’70の基本理念「人類の進歩と調和」の策定に大きく関わっていたのです。

その際に、小松氏は

「これから先、作業が困難にぶちあたった時、必ず”我々はなんでこんな(大変な)ことをやっているんだろう”と悩むときが来ます。
そんな時こそ、この基本理念を思い出してほしい」

といった内容を語ったそうです。

まさに、これこそが「理念」策定の重要性、必要性を端的に示しているのではないかと思いました。
最近は沈静化したようにみえていますが、競技場やロゴデザインなど問題が噴出した「2020年東京オリンピック」。
「いま、なぜまた再び東京でオリンピックを開催するのか」という理念、ビジョンをしっかりと固めて、そしてそれを事あるごとに唱えていればあのような事態にはならなかったのでは?と感じた次第です。

もちろん、ビジョンは明確に定められているのでしょうが、そこに共感や認知への努力があったのか、という点で、どうなのでしょう。

定めるだけではなく、定着するまでのアプローチまでがセットで考えておく必要があるのだと思いました。

【関連サービス】デザイン規定(レギュレーション)策定>>

【参考文献】

「ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則」

ジェームズ・C.コリンズ、ジェリー・I.ポラス著、山岡洋一(訳)

「企業文化が高業績を生む―競争を勝ち抜く「先見のリーダーシップ」 207社の実証研究」

ジョン・P. コッター、ジェイムズ・L. ヘスケット著、 梅津 祐良 (訳)

小松左京ライブラリ http://sakyokomatsu.jp/

NHK BS1スペシャル[メガプロジェクト 開拓者たちの決断「太陽の塔のメッセージ」] http://www4.nhk.or.jp/bs1sp/

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